僕はPCオーディオというものを初めて目にした。
自作PCのOSはWindowsXP、ASIO対応のサウンドボードから外付けのD/AコンバータへUSB接続、ジェフローランドのパワーアンプへ抵抗のみを介して直結、KEFの同軸2WAYのバスレフ型スピーカーを駆動する。ボリュームはfoober2000のソフトウェアボリュームで調整している。
その配置は特異で、デスク上にPC本体、スピーカー、ディスプレイ、キーボード、マウスが置かれている。スピーカーはコンクリートブロックの上に置かれているのだが、その悪影響を考慮してか間には厚めの合板が挟まれている。所謂デスクトップオーディオというものなのだが、メインシステムと呼べるだけの規模のそれは見たことがなかった。
彼のPCに入っている各種音源や、僕が持参した課題曲のCDを聴く中で面白いものを聴かせて貰った。PCで音楽を再生しながら、タスクマネージャでプロセスを切って行くのだ。その中にはヤバそうなものもいくつかあったと思う。その度に音に実体感が増していって、とどめにexplorer.exeを切るとガラっと再生音の表情が変わるのだ。壁紙を切っただけで音のクオリティが増したりするのを目の当たりにした。僕も10年近くオーディオ趣味の世界にいて、何をしても音は変わるものだということは知っているが、まさかそんなことで音が変わるとは信じられなかった。とにかく僕の目の前でPCが奏でる音が変わったのだ。
そうして本気モードになったPCの外付けCD-ROMドライブに課題曲のCDを入れて消化していった。
まもなく気付いたのが、ボリュームを絞ると情報量が減ること。PCの音楽プレーヤーソフトのボリュームの仕組みのよるものだと思う。なので、ボリュームは常に最大に近い部分で聴くことにした。パワーアンプの前段に入っている抵抗の値が適切なのか、音量が上がり過ぎることはない。非オーディオマニアが普通に聴くような音量なのではないかと思う。
その音質なのだが、とにかく物足りない。初っ端からX JAPANを聴いたのだが、スネアのアタックが全く効いていないし、シンバルが鈴のような上品さなのだ。アタックがピークまで立ち上がらない。國府田マリ子のライブ音源で顕著に感じられた傾向なのだが、語りかけるようなヴォーカルはしっかりと鳴らすが、声を張るヴォーカルでは女声が本来持っている耳を刺すような五月蝿さが出ない。生の音が見せる刺激的な一面を一切出さないのだ。彼女の声よりも観衆のオタク男子共の男臭い歓声の方が際立った程である。
村治佳織のCDなんてのは全くもってダメだった。弦のアタックが全くない。クラシックギターは大きな音が出ない楽器であるから、それ相応の小さな音量で楽しめないと嘘なのだ。しかし、とにかく物足りないので、どこまでも音量を上げたくなってしまう。
しかし、高木綾子のフルートで見直すことになる。僕は彼女のフルートの暖く豊潤な音色が大好きなのだが、これをかなり良い線で鳴らして見せた。鋭い立ち上がりを要求されなければ良い音を出すのだ。これには物足りなさを感じることなく楽しませて貰った。
もうひとつ秀逸なのは、その音場である。狭いスペースにスピーカーが設置されているのでそう広い音場ではないのだが、至近距離で聴くのでスケール感は充分だ。楽器の配置を奥行も含めてはっきりと再現してみせる。普通のブックシェルフ型を至近距離で聴くとヴォーカルの口が大きくなりがちになったりするが、狭いスピーカーの間隔が作る音場の広さとバランスの取れたサイズで歌ってくれている。この音像を作る為の試行錯誤は相当なものだったのではないかと思う。
こうして書いていくと、僕がこの音を低く評価しているかのように感じられると思うが、そんなことはない。このシステムが光るフィールドがあるのだ。最近の良くない録音のアニソン達だ。こういった音源は僕の家では全く鳴らない。粗が全部出てしまう。しかし、このシステムはそういった粗を、粗”だけ”を包み隠すのだ。他の魅力はしっかりと描く。ここまでに書いたこのシステムの欠点は、非常に高い次元でのトレードオフの結果なのだ。とにかくどんなに酷い録音でも上手くまとまった音で鳴る。録音の善し悪しを意識させずに音楽だけを聴かせてくれる。最高のプラチナ(坂本真綾)を聴かせて貰ってとても幸せな気持になった。良い音楽体験をありがとう。
僕も最新のアニソンを楽しめるサブシステムが欲しいな~。超電磁砲聴きたいよ超電磁砲聴きたい。球アンプに現代スピーカーの組み合わせが良い線行くんじゃないかなーとか思ったり。
【課題曲】
- X JAPAN BEST ~FAN’S SELECTION~より
- 紅
- 國府田マリ子 / Happy!Happy!Happy!より
- どうしよう
- ~メッセージ~
- Happy!Happy!Happy!
- 國府田マリ子 / My Best Friendより
- まちぶせ
- Pure -Liveバージョン-
- Twin memories -Liveバージョン-
- 椎名恵 / シングル・コレクション2より
- いつか空に届いて
- LOVE IS ALL ★LIVE VERSION
- JUDY AND MARY / FRESHより
- POWER OF LOVE
- DAYDREAM
- そばかす
- Brand New Wave Upper Ground
- 高木綾子 / シシリエンヌ ~フルート名曲集より
- カヴァティーナ
- 宮村優子 / Best Collection めっちゃベストより
- タマシー
- 根性戦隊ガッツマン
- HELLO,STRANGE DAYS
- 村治佳織 / アランフェス協奏曲より
- タンゴ・アン・スカイ
- 村治佳織 / アランフェス協奏曲 XRCD2盤より
- タンゴ・アン・スカイ
- 村治佳織 / transformationsより
- オーバー・ザ・レインボー
- ロンドンデリーの歌
3日乗らないただの人 http://cytender.exblog.jp/11199928/