ぶっちゃけリカンベントってそんなにいいの?っていう話

ぶっちゃけリカンベントってどうなのよ?っていう話でリカンベントの安全性の面で色々書いたわけですが、
「だからって何でわざわざリカンベントなわけ?ロードバイク最強じゃん」
というところには触れていなかったので、その辺について書いていこうと思います。

速く走ってもゆっくり走っても楽

ロードバイクは走行ペースに合わせて前傾姿勢を取ります。前傾姿勢を取ると上半身は前に倒れようとしますが、ペダルを踏み込むことでこれを相殺することができます。ロードバイクはこのバランスが取れているときに最も楽に速く走ることができます。このペースよりも遅く走っている場合でも常に姿勢を維持するためのエネルギーを消費し続けています。走行ペースに関係なく常にエネルギーの消費があるかわりに全身から一滴残らずエネルギーを絞り出して走れるのがロードバイクということになります。

対してリカンベントは、出力が0ならエネルギー消費も0です。出力を上げていくとロス無くそのまま走行速度に反映されます。この効率の良さと引き換えに、出せる出力はロードバイクと比べて頭打ちになります。

燃費のリカンベント、馬力のロードバイクですね。リカンベントはめちゃくちゃ速いんだっていう話をよく聞きますが、リカンベントが速いのは出力の低さのデメリットを空力面のメリットが上回る限定的な状況のみです。リカンベントは思われている以上にずっとまったり走っても楽な自転車なのです。

でも登りは地獄なんでしょ?

それは半分誤解です。リカンベントはロードバイクと比べると出力が出ませんから遅いです。でも効率は良いので楽に登れます。ロードバイクと同じ速度で登ろうとすると限界以上の出力を出さなければいけないので大変です。それとは反対にロードバイクがリカンベントと同じ速度で登った場合、リカンベントの方が効率が良い分だけ楽です。競わなければ登りであってもリカンベントの方が楽なんです。

バイクコントロールむずいんでしょ?下りとか

これも半分誤解です。
「リカンベント乗ってみたけど難しかった」
という話は見聞きするのですが、初めて乗る乗り物が難しいのは当然です。私も乗り始めたときには、簡単に乗れはしたけどクセがあるな…ちょっと神経質なところあるな…という評価を持っていました。しかし、乗り続けていくうちに評価が変わって超ハンドリングマシンであることに気付きました。要はコツを掴めているかどうかです。公道走行向けの市販車であればそれに見合った操縦性になっていますから、そう不安に思うことはありません。

荷物持てないでしょ?

そうでもありません。身体に身に着けて持つことはできませんが、車種によってはリヤキャリヤがオプションで用意されていますし、汎用品を工夫して取り付けている人もいます。また、シートの両サイド下部をまるごと積載スペースとして使えるバッグもあります。意外と荷物も持てるんです。しかも荷物の重量があまり気にならないんです。ロードバイクはダンシング等でライダーとバイクで別々の動きをすることがあります。ダンシングをせずとも意外にバイクだけ振って走行ラインを変えたりしていると思います。この際に荷物の重量はバイクの重量に対して作用するのでそれなりに重く感じることになります。リカンベントはライダーとバイクが背中とシートで密着していますから、バイクだけがライダーと別の動きをすることはあまりありません。そのため、荷物の重量はバイク+ライダーの重量に対して作用します。例えば、ロードバイク8kg+荷物2kgよりもライダー60kg+リカンベント12kg+荷物2kgの方が荷物の2kgが全体に与える影響が少ないというわけです。

まとめ

リカンベントは楽なんです。その他の面でロードバイクとは勝手が違って最初は苦労することもありますが、大抵のことは何とかなります。時にはDIY力を試されることもありますが、それに見合うだけの良さがあります。万人にお勧め出来るものではありませんが楽に、長く走りたい人、メカ弄りが苦にならない人には検討に値するものなのではないかと思います。

ぶっちゃけリカンベントってどうなのよ?っていう話

リカンベントに興味はあるんだけど恐い…とか危なくないの?とか不安を感じている人ってそれなりにいるんだなと思い、安全面でのメリットデメリットとそれに対する対策を書くことで漠然とした不安を解消して貰おうという意図から表題に繋ります。

車から見えるの?

車からどのようにリカンベントが見えているか? が良くまとまっています。ざっくり言うと「接近すると見えないよ」ってことですね。ただ、それ程悲観することもありません。接近すると見えないくらい低いのは見てわかりますから、自動車が寄って来ません。あとは自分から死角に入らないように立ち振舞えば良いのです。

  • 記事でも触れられていますが、すり抜けは控えます。
  • 歩道は死角が多いため出来るだけ走らないようにします。
  • 車道では脇道や路外から進入しようとする車から見て沿道の構造物の死角に入りにくいように、過度に道路端に寄り過ぎないようにします。
  • 右直事故に注意します。右折待ちしている車の左側を通る時、対向の右折車からは死角になっていてこちらが見えません。

思い付くことをいくつか書きましたが、これらのことってリカンベントに限らず安全上有効ですよね。リカンベントの安全性は乗り手が当たり前の安全運転が出来るかどうかにかかっています。

視界悪くない?

とても良いです。アップライト車(リカンベントについての文脈でそれ以外の自転車を指す際にこう呼びます)は前傾姿勢に応じて視線が下に向きがちで、その為に左右の視界が狭くなりやすいです。そのために意識して視線を遠くに向ける必要があるのですが、リカンベントではその必要がありません。

2枚の写真は異なる2車種の視界をイメージして乗車した状態で顔の前にスマートフォンを構えて撮影したものです。

足元見にくくない?

見にくいですが、そもそも見る必要がありません。目線は下ではなく前に向けて、先の路面状況を把握しながら走ります。アップライト車でも同様だと思います。

後ろ見えるの?

見にくいですが、見えないこともありません。大半のリカンベントユーザーはミラーで補っています。むしろミラーによってアップライト車と逆転してむしろ良いくらいになります。(リカンベントは頭部の位置が安定しているためミラー越しの後方視界も安定しているのです) ミラーだけでは斜め後ろに死角がありますが、必要であれば上半身を少し起こして後ろを振り返ります。

転んだら大怪我するんじゃないの?

こちらかなりの速度で転倒している動画ですが、乗車姿勢のまま車体からずり落ちて、そのまま路面を滑っている様子がわかります。私も立ちごけや登りでの低速での転倒等経験しましたが、この動画と似たような腰から落ちるような転び方でした。アップライトと比べて転倒時の怪我の程度が大きくなりやすいということはなさそうです。

止まれるの?

止まれます。アップライト車は制動時に荷重が前に極端に偏るため、乗り手が姿勢を変えることでこれを軽減させる必要があります。この荷重移動が十分にできていないと簡単にジャックナイフして転倒してしまいます。乗り慣れていると実感することもあまりないと思いますが、リカンベントと比較してアップライト車の制動には高度な技術が必要です。各人程度の違いはあっても無意識のうちに荷重移動をしているはずです。

リカンベントは重心が低いためこの荷重移動が必要ありません。(そして出来ません) 制動に関してはリカンベントの方が簡単で有利と言えます。(乗車位置が高いハイレーサーについては乗ったことがないのでわかりません)

段差越えられるの?

難しいです。ただ、走行時にそのまま越えられるような小さな段差であればアップライト車の抜重と似たような動作で衝撃を軽減することができます。手足の力を抜き、上体をやや起こして尻だけでシート上でバランスを取ることで、アップライト車でサドルから腰を上げるのに似た効果が得られます。

小回り効くの?

車種次第ですが、殆どの車種は車道を走る軽車両として運用するのに十分な小回り性能を持っていると考えて問題ありません。私が乗っているF-FWDはハンドルの切れ角に制限があるため小回りが効かない車種ですが、車道を走る分には多少の慣れは必要でしたが問題なく運用できています。アップライト車と同等かそれ以上の小回りが出来る車種もあります。

咄嗟の危険回避できるの?

咄嗟のことですから、乗り手と運の問題です。そういう事態にならないように無理をしないことが大切です。

まとめ

リカンベントの安全性は普通だと思っています。ある面では安全で、ある面では危険ですが、それは大抵の乗り物に言えることです。大切なのはその特性を理解して対処することです。自分が普段乗っている自転車の何が危険で何に気を付けているのかを考えてみるといいです。それが出来ればリカンベントにも楽しく乗れる筈です。

安全性についてはわかったけど他はどうなのよって思った方はこちら
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