道路交通法の一部を改正する法律案について

国会提出法案|警察庁Webサイト (npa.go.jp)
令和6年3月5日 道路交通法の一部を改正する法律案
要綱(55KB)
案文・理由(100KB)
新旧対照表(158KB)
参照条文(120KB)
参考資料(584KB)

先日、国会に提出されたとする法案です。自転車の青切符適用についてはニュースでよく話題になっているようですが、今回は上記画像にて引用した件について着目して私見を述べていこうと思います。

3 車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)は、当該車両と同一の方向に進行している特定小型原動機付自転車等(歩道又は自転車道を通行しているものを除く。)の右側を通過する場合(当該特定小型原動機付自転車等を追い越す場合を除く。)において、当該車両と当該特定小型原動機付自転車等との間に十分な間隔がないときは、当該特定小型原動機付自転車等との間隔に応じた安全な速度で進行しなければならない。

道路交通法第十八条第3項に新設されるものです。側方間隔を空けるように求めていきたいところですが、今回はそのような規定は”設けられません”。「安全な速度で進行」という義務のみが設けられます。
「当該特定小型原動機付自転車等を追い越す場合を除く。」
という除外規定がありますが、では追い越しの場合はそんな義務がないのかというとそんなことはなく、既存の法令にて「追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は(中略)できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。」と定められています。(道路交通法第二十八条第4項)

まとめると、現状では追い越し時には注意義務が明示されていたところ、特定小型原動機付自転車等(以下自転車と呼びます)の追い抜き時にも注意義務が明示的に課されることになります。コレジャナイ感は否めませんが、進歩といえば進歩でしょう。

では次。新設される道路交通法第十八条第4項を見てみましょう。

4 前項に規定する場合においては、当該特定小型原動機付自転車等は、できる限り道路の左側端に寄つて通行しなければならない

(罰則 第二項については第百十九条第一項第六号 第三項については第百十七条の二第一項第四号、第百十七条の二の二第一項第八号ロ、第百十九条第一項第六号 第四項については第百二十条第一項第二号)

自動車が速度を落とすことのバーターとして自転車に義務が課されます。通常の通行位置は「道路の左側端に寄つて」のところ、追い抜かれる場合に限って「できる限り道路の左側端に寄つて」となるわけです。自動車には進路を変えて側方間隔を空ける義務は設けられないけど、自転車には課されます。不公平ですね。

もうひとつ、見落しやすい変更点があります。道路交通法第二十条第3項の改正案です。

3 車両は、追越しをするとき、”第十八条第四項”、第二十五条第一項若しくは第二項、第三十四条第一項から第五項まで若しくは第三十五条の二の規定により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、(中略)又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前二項の規定によらないことができる。

この”前二項の規定”というのは、自転車に関連するのは第1項になりますが、車両通行帯がある場合は第一通行帯を走りなさいという規定です。語弊あるのを承知でざっくりいうと、「片側2車線以上ある場合は左の車線の中を走りなさい」という決まりです。車線の外の端の部分を走ってはいけません、ということですね。片側1車線の場合にはない決まりです。

難易度高ぇぞおいぃ!?

では、自転車が後方から来る自動車に対して(できる限り)端に寄る義務が発生するケースと発生しないケースを個別に考えてみます。要は、この法案が通ったとして我々自転車利用者の運転行動はどう変化するのか?ということです。イメージしやすいように「できる限り道路の左側端に寄つて」の程度をここで説明しておきます。
この文言の通り課された義務によって左端に寄っているものとしてイメージしやすいのは「左折している教習車」でしょう。きっちり左端に寄せていると思います。あれが「できる限り道路の左側端に寄つて」の程度として考えられる基準です。
「最初から常に寄っておけばいいんでしょ?」
というのが現実的ではないことがわかると思います。

追い越される場合

自動車がそのまま進めば追突になるから右に避けなければいけない場合ですね。これは今まで通り、何も変わりません。

既にできる限り寄っている場合

これも変わりません。これ以上はどうしようもありませんからね。

片側1車線、できる限りではないけど端に寄っている(通常の走行位置)、スレスレなら側方通過できそうだ

寄る義務が発生します。路面が荒れ気味等で車道外側線の左側に余地を残している場合等あるかと思いますが、できる限り寄る必要があります。「できる限り」ですから、無理はしないでください、罰則ありますけど。

片側2車線、車両通行帯らしいから車線内の左に寄って走っている。スレスレなら側方通過できそうだ。

寄る義務が発生します。ただし、抜かれたら元の車線内に戻らなければなりません。自動車が追い抜きではなく追い越しを選択した場合は車線外に出てまで寄ってはいけません。意味がわかりませんね。後方から来る自動車に応じて車線の内外を行ったり来たりしなくてはなりません。行くも来るも間違えれば罰則が待っています。青切符です。

理由は置いといて、第一車線の右端を走っている

賛否あろうかとは思いますが、車両通行帯指定があるなら合法です。車両通行帯指定がない場合、「道路の左側端に寄つて」の程度解釈によるところで、これには罰則もありませんから、そういう自転車を見かけてもそっとしておきましょう。
この場合、第二車線を走る自動車との側方間隔は近いものになるでしょう。ですから、この場合は寄る義務が発生します。ただ、車線の外まで寄る必要があるとは考えにくいです。車線内で進路を変えるのみで側方間隔が確保され、その時点で寄る義務がなくなるからです。

今後の走行位置の最適解を考えてみる

片側1車線

今まで通りある程度の余裕をもって寄っておけばいいでしょう。自動車が来たら無理ない範囲で寄ることになります。今までもそうしてきたと思います。新設される法令によりスレスレを高速で抜かれることがなくなっていることを祈りましょう。

片側2車線(以上)、車両通行帯指定なし

片側1車線と同様です。車両通行帯指定がないただの車線には自動車、自転車共に法的な拘束力は発生しませんから、2車線分の幅がある1車線と捉えて差し支えありません。

片側2車線(以上)、車両通行帯指定あり

第一車線の中央を走るのが最適解です。先に述べた通り、車線の左端に寄ると現実的ではない高難度の走行を強いられます。車線の外を走っても青切符です。車線の中央を走り、自動車には「追い越し」の選択肢しかない状況を作りましょう。その場合、自動車には隣の車線に移る義務が発生します。

片側2車線(以上)、車両通行帯指定あるかわからない

車両通行帯であると見做して第一車線の中央を走るのが最適解です。もし車両通行帯指定があった場合はこれで何も問題ありません。車両通行帯指定がなかった場合、問題になる可能性があるのは道路交通法第十八条の端に寄る義務ですが、これはその程度に解釈の余地があり、仮に違反とされても罰則はありません。罰則なしの違反となる覚悟で第一車線の中央を走るのが最適解です。消去法でそうなります。

最後に感想を

何考えてっかさっぱりわかりません。それより側方間隔1.5mを明文化しなさい。こんな非現実的でチグハグ支離滅裂な法案は通すべきではありません。これで何かが良くなるとは到底思えない法案です。何考えてんだ。

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